ついにこの日が来てしまったか・・・。僕はリングテイルへと向かう車の中で、感慨深く溜息をついた。
思えばこのゲーム『WHRPG3』を始めてから半年になる。
*** *** *** *** ***
【ウォーハンマー3をプレイしたよ】 2010年07月22日
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1543710092&owner_id=28799425 *** *** *** *** ***
上にある日記を読むと、7月の暑い夜を思い出す。去年の夏は異様に暑かった。そんな猛暑の中で、僕達5人はWHRPG3をプレイしたのだ。
WHRPG3は、月2回程度の割合で行われてきた。途中で都合の合わない日もあったが、そういった障害は全て乗り越えて今日まで来た。仕事や学業が忙しかろうが、ウォーハンマーが好きと言う気持ちは全員が持っている。
今回がラストのプレイだ。僕達は別れを惜しむように挨拶をして、リングテイルの2Fへ上がった。このメンバーで集まるのは、おそらく今回で最後だろう。
プレイが始まった。
冒険は前回の続きから。すなわち、謎のネズミ捕り組織へ強襲をかけた所からだ。
*** *** *** *** ***
冒険者達は武器を振りかざしながら、意気揚々と洞窟を進んでいく。出会うものを全て倒す気概で、誰にも止められはしない。
何度かの障害を乗り越え、ついに冒険者達はネズミ捕りのボスを発見した。広場で10名近い手下と一緒に居て、何かを話し合ってる。
冒険者は足音を殺し、コッソリと聞き耳を立てた。すると冒険者の耳に、聞いた事の無い生き物の声が聞こえてきた。
冒険者は耳を澄ませた。それはゴリゴリと岩を砕くような、低重音の(まるで悪魔の様な!)声だ。その声が、ネズミ捕りのボスを叱責するかのように響いてる。
冒険者は思った、やはりネズミ捕り達を、裏で操ってる存在があったのだ。
冒険者は、今すぐに戦いを挑むが出来なかった。勝機の無い戦いをする訳にはいかない。幾ら勇んでみても彼らは冒険者であり、騎士ではないのだ。
冒険者は辛抱強く待った。チャンスはきっと来る、そう信じて辛抱強く待った。
戦うのなら、敵の黒幕が居ない時にするべきだ。敵の数は一人でも少ないほうが良いし、なにより悪魔めいた声をする黒幕との直接対決は、何としても避けたかった。
・・・やがて、その時は来た。敵の黒幕が、ネズミ捕り達が居る広場から出て行ったのだ。
それを見た冒険者は、戦い準備を始めた。戦士が槍を構え、魔法使いが精神を集中させる。広場に居るネズミ捕り共を締め上げて、この事件の全貌を吐かせるのだ。
冒険者は頃合を見はかり、広場に雪崩出た。
勝負は簡単についた。敵は10名ほど居たが、魔法使いの雷の呪文で一掃された。最後は隊列が崩れた所に戦士と僧侶が襲い掛かり、敵を散々にやっつけた。
すぐに冒険者は敵大将を捕縛し、尋問をする。
「おいお前、さっきの化け物はなんだ!」
「あ、あれはスケイブンだ!ネズミの化け物なんだよ!」
「な、スケイブンだと!?お前は俺達を馬鹿にしてるのか!」
そのふざけた答えを聞いて、冒険者は声を荒げた。スケイブンとは絵本に出てくる化け物の事で、現実に居るわけがないと冒険者は知ってるからだ。
相手が出鱈目を言って誤魔化そうとしているのは、火を見るより明らかである。
「もう一度聞く、お前らの黒幕は誰だ!」
「本当にスケイブンなんだ。ネズミの化け物は存在するんだ!」
「いい加減なことを言うな!キサマ、腕の一本ぐらいじゃすまないぞ!」
「そうよ!あんたなんかゴブリンの餌ですわ!!」
神官の少女は声を荒げるが、男は頑なにスケイブンの存在を主張した。
冒険者達は思った、これでは埒が明かない。
「じゃあ質問を変えよう。お前達の目的は何だ?」
冒険者の問いに、男は声を小さくして答えた。なんとこの地下迷宮の真上にシグマーの神殿があり、そこに忍び込もうとしてたのだ。
何でも大変なお宝があるらしく、スケイブンはそれを狙ってネズミ捕りと接触したのだと言う。更にシグマー神殿に詳しい貴族の娘を誘拐し、牢に閉じ込めてるらしい。
それを聞いた冒険者は男の両手を縛り、貴族の娘を閉じ込めてる牢屋へ直行した。もしそれが本当なら、早く助けなければならない。
縛った男を先頭に歩かせ、冒険者は走るようにして牢へ向かった。
隠し扉の後ろに、牢はあった。牢の中には美しい娘が手枷をはめられ、閉じ込められてる。冒険者はすぐに助けようとしたが、ビクリと足を止まらせた。
何故かと言うと、牢の前に見た事の無い 化け物 が居たからだ。
オーガみたいな巨大な体をしており、頭にはネズミの顔が乗ってた。身長は3M近くなるだろう。だがそれの放つ威圧感は、巨人にも匹敵する。
赤い目が、ギラリと光った。
冒険者の一人が悲鳴を上げた。怪物は冒険者を睨み付け、その巨体からは想像もつかない速さで襲い掛かってきた。
戦闘だ!
冒険者は思った、おそらくこれが最後の戦いだろう。長い冒険も、これで終わりだ!
冒険者は勇ましく武器を構え、怪物は戦いの咆哮を上げた。怪物が叫ぶ度に、洞窟がビリビリと震える。
怪物の力は、その巨体に見合ったものだった。化け物の振るう鉤爪で、戦士の金属鎧が薄紙のように切り裂かれる。体から血が噴水のように噴出した。
戦士が命を掛けて前衛を勤めてる間に、後衛のマジックユーザーが戦士をサポートすべく魔法を放った。
神官の使う『弱き』の魔法が怪物を包む。すると怪物の筋肉が萎び初めて、ヘナヘナと地面に座り込んだ。魔法の効果により怪物は、その怪力を失ってしまった。
「この魔法が効くのは30秒だけよ!お願い、今の内に奴を倒して!」
魔力を使い果たした神官の少女は、掠れる様な声で叫んだ。そのピンク色だった頬は疲労で真っ青になり、今にも倒れそうになってる。『ミルクティー・プリンセス』と呼ばれた少女が、この様な死闘を繰り広げるなど誰が想像しただろうか。
「まかせろ!こんな奴10秒あれば十分だ!」
少女の声を受けて、戦士は痛む体を引きずりながら怪物へと向かって行く。戦士の突き出す槍が、怪物の腹にグサリと刺さった。
それを見た盗賊は、戦士に続けとばかりにギリギリと弓を絞った。
「俺は盗賊だけどね、宝箱を開けるより、敵に矢を撃ってる時が一番好きなんだ!!」
サラリととんでもない事を言いながら、ビュンと矢を放たれた。盗賊の放つ弓が戦士の頭上を越えて、怪物の顔に突き刺さる。
顔に矢を突き立てられた怪物は、両手を振り回しながら盗賊に襲い掛かろうとした。だが真正面にいる戦士が、それを許さない。大きな盾を使って、怪物の突進を防ぐ。『弱き』の呪文を受けた怪物には、戦士を撥ね退ける力は無かった。
「グハハハ!混沌変異を持つ偉大な魔術師の魔法を、食らうがよい!」
魔術師は体を銀色に光らせながら、雷の魔法を放った。彼の体と同じ色をした銀の雷が、怪物の体を包み込む。怪物の巨体が真っ黒にこげて、バチバチと音をたてた。
この一撃を受け、怪物はドシンとその巨体を地面に沈めた。さしもの怪物も、冒険者達の連続攻撃には耐え切れなかったのだろう。地面に倒れた巨体は、ピクリとも動かない。
冒険者は慎重に怪物に近づいて、本当に息の根が止まっているかを確認する。
怪物は、死んでいた。
冒険者は、勝ったのだ。
喜び、抱きしめあう4人の冒険者。
ハッとした。抱き合ってる場合ではない。冒険者は牢に目を向けた。牢に繋がれた貴族の娘を、助けなければならないのだ。祝杯を挙げるのは後だ。
冒険者達は牢へ入り、貴族の娘を助け出した。娘は牢番の怪物をずっと見てたせいか、多少正気を失ってる。冒険者は貴族の娘に助かった事を伝えると、逃げ出すようにこの地下洞窟から脱出した。
冒険者は地下洞窟から抜け出した後に、事の顛末をシグマー神殿に報告した。冒険者も詳しいことは分からないが(まさかスケイブンなどがいる訳が無い)シグマー神殿が狙われているのは本当だと思われる。シグマー神殿には警戒して貰わなければならない。
報告が終わったら、冒険は終わりだ。ここで自分達が出来る事はもう無いだろうと思い、冒険者は町を去る事にした。
だが町を去る直前に、待ったがかかった。この町の領主が、冒険者達に話があると言うのだ。冒険者達はお宝の匂いを感じて、素直に話しを聞いた。
「えー冒険者諸君、ヘイデルドーフの村を覚えているかね?」
「はい、とても個性的なソーセージを出す村ですね。絶対に忘れられません」
「君達も知ってると思うが、今その村には領主がいない。どうだろう、君達がそこの領主になってくれないか?」
「え!?」
まさかの申し出に、椅子から飛び上がる冒険者達。
「君達はヘイデルドーフの英雄だからね。村人も歓迎してくれるよ」
「そ、それって、村から税を取ってもいいの?」
「君達は領主だからね、もちろん税を取ってもいいよ」
ウヒョー!
冒険者達は踊りだした。
「あ、あとですね。僕たちの住む、お城とかあったりして。ヒヒ」
「もちろんさ。君達が住むお城は、黒石城があるじゃないか」
「え・・・。あの、僕らが何度も死に掛けた、黒石城ですか・・・?」
当時の事を思い出して、ピタリと踊りをやめる。
「そうだけど、もしかして不服かい?」
「いえ、とんでもありません。ありがたく頂戴いたします」
「それは良かった。領主は冒険者と違って自由はないかもしれないが、その分やりがいの有る仕事だと思ってる。これから村のため、皇帝陛下ために、よろしく頼むよ」
「お任せあれ!髑髏砕き『ガールマラッツ』の名に掛けて!皇帝陛下万歳!」
万歳の掛け声が、部屋中に響き渡る。今まさに、若き4人の英雄が誕生した。彼らは帝国のため民のため、これからも勇敢に戦い続けるだろう。
・・・かくして、冒険者達の旅は終わった。
その日暮らしの生活から、城持ちの貴族なった4人の冒険者達。
彼らが成し遂げた立身出世の物語は、永久に語り継がれる事になる。
完
【追記】
ここまで読んでくれた皆様、大変お疲れ様でした。長い冒険もこれで終わりです。
GMのスチュさんは東京へ行っても、元気で頑張って欲しいですね。もちろん僕も頑張りますよ。
あとプレイの感想等のレポは、別件で上げようと思ってます。さすがに本文が長くなりすぎて、分割する事にしました。
それでは皆様、失礼いたします。
スポンサーサイト
《前回の続きから》
無法者共が巣くってるという黒石城。PCの仕事はその無法者共を追い出す事だ。
距離はこの村から、徒歩で半日程度だと村長から聞いた。しかしそれ以上の詳しい事は一切知らない。PCは黒石城の情報を村人から聞くために、酒場へと向かった。
良い気分で一杯やってる村人から話を聞くと、黒石城は今でこそ真っ黒だが、昔は白いお城だったらしい。何故黒くなったのかは良く分かってない。村人は色々と話すが全て憶測の域を出ず、これぞという話は無かった。
しかし、非常に気になった話がある。ちょうど昨年の今頃に、黒石城へ向かった冒険者達が居るというのだ。
PCは酒盛りをしている村人の輪に入り、更に詳しい話を聞いた。その冒険者は黒石城に向かった後、行方が知れないのだと言う。当然、死んでるに決まってる、村人はソーセージを齧りながら言った。
それだけではない。【毎年】お祭りの時期になると、必ず冒険者が黒石城に向かう。そしてそのまま、二度と戻ってこないのだ。
その時、PCに電流が走る・・・っ!
消えた冒険者達。
謎の特製ソーセージ。
その二つをあらわすものは一つ・・・っ!
シュゼットは体を電流でビリビリ震わせながら、仲間であるエルフのアルソンを見た。
「今年は・・・・・・エルフのソーセージが出てくるんでしょうね」
「それと13歳の神官のソーセージもな」
シュゼットはそう言われると、泣きながらソーセージを食べた。ソーセージはとても美味しかった。
*** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** ***
そんな恐ろしい空想をしつつも、PCは黒石城へ向かった。
積もった雪を踏みしめて、城の入り口に辿り着く。壊れた門を乗り越えて、PCは注意深く城を観察した。
城は朽ち果てており、人の手が加えられた様子は無い。それに煙突からは煙が上がってないので、おそらく無人だろうとPCは推測を付ける。この寒さの中、暖を取らずに過ごせるものではない。
――無人?
ハッとなった。城に巣くってる無法者共は、どうなったのだ?
シュゼットは、無人の城を見つめてこう言った。
「・・・・・・ソーセージになるのは、嫌」
《続かない》
【追記】
これ以上書くとネタバレになっちゃうよ。やばいやばい。
だから今回のレポはこれでおしまいです。中途半端ですみません。
あと新年会乙かれさまー。とても楽しかったです。詳しい感想はまた後日。
でもこれだけは言わせて下さい。
勝った・・・。
勝ったぞ!!
あーはっはっはっは!!